氷河は知っていただろう。 女神も知らない、僕の秘密。 僕が――闘いを好きだったこと。 何よりも、誰よりも、闘いを欲していたこと。 闘える。 闘えるから逃げたんだよ。 でなかったら、こんな孤独は耐えられない。 それは――最初は、小さな勝利だった。 僕は、卑怯な罠を仕掛けてきた敵の一人を屠った。 勝利者としての、その優越。 生きるために仕方なく、 力を持たない人々を守るために本意ではなく、 僕は闘い続けてきた――はずだった。 闘いの理由はいくらでも、手に入れられた。 平和のため。 邪悪を退けるため。 故郷の星を守るため。 愛する人を守るため。 けれど。 闘いを続けているうちに、 僕の神経には狂いが生じ、 僕の心は病んできた。 僕が――勝利の快楽に溺れるようになるのに、さして時間はかからなかった。 闘いは恐ろしい。 僕の魂が乗っ取られる。 僕は、誰もいないところに自分を追放しなければならなかった。 敵も味方もいないところ。 孤独だけがあるところ。 闘いという聖なる義務を放棄した卑怯者と罵られることも、永劫の孤独も恐くない。 故郷を裏切ることよりも、仲間たちを騙すことよりも、闘いを望む自分自身こそが恐かった。 |