氷河は気付いていたに違いない。 僕がなぜ、故郷の星と仲間たちに背を向けたのか。 向けずにいられなかったのか。 だって、氷河は知っていたんだもの。 闘いの後、勝利の後、僕がどれだけ、氷河の腕の中で歓喜するかを。 氷河の胸の下で、僕がどんなふうに喜悦に溺れるかを。 闘いは麻薬。 勝つことは媚薬。 僕は闘いが好きになっていた。 人に勝利することが好きだった。 勝利――あれほどの快感が、他のどんな方法で得られるだろう。 氷河に組み敷かれている時ですら――それが闘い以上に心地良かったのは、闘いの勝利に酔っている自分を受動の身に置くことで罰を受けているように思えたから。 氷河によって罰を与えられているのだと思うことで、僕はますます勝利の喜びを大きくした。 氷河は知っていたはず。 敵を倒した夜には、僕の欲望と歓びが常よりもずっと激しく深いこと。
己れの罪におののき、悔悟の涙を流しながら、僕は快楽に酔っていた。
そうすがりつく時の僕の瞳が輝いていたことを、氷河は知っていたはず。 氷河に傷めつけられるように愛されるたび、甘く深くなる僕の喘ぎを、氷河はその耳と肌とで感じていたはず。 どうして僕は闘うの。 どうして僕は闘いを欲するの。 闘い続けずにいられないの。 闘いを欲している自分を知られたくなくて、僕は逃げ出した。 僕の真実の姿を――僕の中にある醜さを、それ以上、氷河の目にさらしていたくなかったから。 僕は、自分で自分に流罪を言い渡したんだ。 |