「僕が氷河を守ってあげる。僕が氷河のために、何でもしてあげる」 「なぜ。本当にわからないな」 「僕は、氷河のために破滅しても幸福なんだ」 「俺がおまえに何をしてやれるというんだ? 俺は愚か者だから、おまえに何も与えてはやれないぞ」 ゆっくりと、瞬の指は、氷河の頬の線をなぞり―― 「代償なんていらない」 「いらないはずがないだろう」 唇に辿り着いた。 「いらない」 瞬のその指を―― 「……俺は、おまえに貰うだけ、与えられるだけか。まるで子供だな」 子供のように舐めてやる。 瞬は、微笑しながら、氷河の顔を覗き込んできた。 「氷河はね、僕を求めてくれればいいの。それで僕は、自分が生きていることの意味と理由を実感できるから」 「おまえを」 「そう、僕を見て。僕の心と身体を求めて。どこまでも」 「そんなことなら、いくらでも」 氷河は瞬の腰を引き寄せた。 抱きしめた瞬の胸元に唇を押し付ける。 喉をのけぞらせる瞬を、氷河はそのままシーツの上になぎ倒し、組み敷いた。 氷河の首に、瞬が白い腕を絡めてくる。 その指先に込められた力で、瞬が何を求めているのかが氷河にはすぐにわかった。 「僕の気が狂うくらいに」 瞬は本当にキスが好きだった。 甘いお菓子をねだるように、瞬はそれを氷河に求め続ける。 舌を絡めるキスを数分も続けていると、それだけで、前戯もいらないほどに瞬の身体はしなってくるのだ。 氷河のキスに目を閉じて恍惚としている瞬の耳許に、氷河は低く囁いた。 「もうやめてくれと泣いて懇願しても、やめてやらん」 「素敵」 間もなく、その言葉通りのことが起こり、氷河は、賢明な恋人の哀願を唇で遮って、その細い身体を容赦なく揺さぶり続けた。 |