氷河は、翌日も、そのまた翌日も登校してこなかった。
いつものこととのんびり構えていた星矢や紫龍たちも、氷河の無届けの欠席が1週間の長きに及ぶに至って、ついに『悠長』の看板をおろすことにしたのである。

「1週間も音沙汰なしは、さすがに危険だろ。エサ食ってるかどうかだけでも確かめないと」
「1週間もエサを食わないでいたら、いくら獣の胃袋持ちの氷河でも死んでしまうだろうしな。あの馬鹿、ケータイの電源も切ってるし」

その時になって初めて、瞬は、氷河が一人暮らしをしているということを知らされた。

「氷河の様子を見に行くが、瞬、おまえも来るか?」
「え? どうして僕が?」
「どうして……って、おまえ、奴が心配じゃないのか?」
「ぼ……僕は……別に……」

言い澱む瞬の様子を見て、紫龍は、即座に、二人の間に何事かがあったことを察した。
そもそも、こういう時には赤の他人でも心配するのが身上の瞬が、友人の安否に無関心を装うなど尋常では考えられないことなのである。

「……俺としたことが……。氷河の引きこもりの原因はおまえか」
価値観の違いすぎる二人が、どういう経緯でぶつかり合ったのかはわからないが、どうやら分は氷河に不利だったらしい。
理屈で、あの氷河が瞬に負けることなど考えられない――というのが、紫龍の本音だったのだが、結果はそういうことだったのだろう。

そして、そういうことになった氷河の敗因に、紫龍は、ただ一つの可能性しか思い当たるものがなかった。


「そういうことなら……おまえは来なくてもいい。俺と星矢で様子を見てきてやろう」

俯いてしまっている瞬に、紫龍はそう言ってやったのだが、瞬は横に首を振った。

「僕も行く……。行かなくっちゃ……」

何やら壮絶な決意をたたえた表情でそう言い切る瞬を見て、星矢と紫龍は思わず顔を見合わせた。






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