これまでの自らの闘いが、いかに恵まれた闘いだったか――を、瞬は苦い思いと共に噛み締めていた。 そこにはいつも、自分と敵しかいなかった。 対峙する敵は瞬だけを見、瞬もまた自分の目の前にいる敵だけを見ていられた。 力も、罪も、逃げる場所を見い出す術も持たない第三者が闘いの場に紛れ込んでいたことなど、そんな場所で闘いを闘ったことなど、瞬はこれまで一度もなかったのだ。 『闘い』というものが人間に忌み嫌われる本当の理由は、闘いによって傷つき倒れるのが闘いの当事者だけではないからなのかもしれない。 「助けて! 氷河、その子を助けてあげて!」 自らの手の代わりであるチェーンを敵に絡め取られていた瞬は、ちょうど数人の敵を倒したばかりだった氷河に向かって叫んでいた。 その声を聞いた氷河が、瓦礫の陰で、身を潜めることすらできずに泣き叫んでいる幼い少女の許に走っていく。 その様子を認め、安堵してから敵に向き直った瞬は、命を懸けた闘いの場で敵以外のものに気をとられている闘士を嘲笑うかのような攻撃にさらされることになった。 |