その青い瞳は、ひどく苦しんでいるようだった。 憤っているようにも見えた。 怯えや、期待や、それから、何かを懐かしむような色も混じっていた。 そこにあった感情をどう表現したらいいんだろう。 冷たい炎、燃えさかる氷、憎み合う愛、愛し合う憎しみ――僕は、シェイクスピアがよく使う矛盾撞着語法のフレーズを思い浮かべていた。 彼に初めて会った時、僕はその複雑な眼差しの色に驚き、その鋭さに射すくめられて、しばらく身動きができなかった。 息をするのも忘れていた。 無言で、彼は僕を見おろし、見詰めていた。 たっぷり、5分。 その間、彼をここに連れてきた星矢も紫龍も何も言わず、ただ氷河を心配そうに眺めているだけ。 長いその沈黙の後で、星矢が、なんだか落胆したような声で、彼を僕に紹介してくれた。 「あ、あー……瞬。こいつ、氷河っていうんだ。今日から、城戸邸で暮らすから、よろしく頼むぜ」 「氷河……?」 変わった名前だ――と僕は思った。 もちろん、口には出さなかったけど。 青い瞳の呪縛から逃れて、他の部分を見回すと、彼は随分と綺麗な人だった。 僕より15センチほど高いところにある彼の頬はひどく青ざめていて、少し長めの金髪が肩にかかっている。 文句のつけようもないくらい整った造作に、鮮烈なアクセントがひとつ。 額の左側にこめかみを横切って、10センチ近い傷痕。 まだ新しい傷のようだった。 多分、糸を抜いて、さほどの時間が経っていないのだろう。 僕の目には、でも、痛々しいはずのその傷が、なぜだか美しいもののように映った。 「初めまして。僕、瞬です」 「…………」 彼は相変わらず無言で、僕を見ている。 複雑な眼差しに驚愕の色が混じった。 表情は変わらないのに――無表情のままなのに――僕にはそれがわかった。 |