瞬は、氷河に、弁明も説明も言い訳もすることができなかった。 氷河にそんなふうに思われてしまったということがショックで、ただ一つの言葉も思い浮かばなかったのである。 就職活動を始めて、最初に不採用の通知を受け取った時にも、これほど落ち込んだりはしなかった。 面接室で、家族のことを聞かれ泣きそうになった時も、これほど辛い思いは抱かなかった。 車を出そうと言う氷河の手を振り払って、瞬は、とぼとぼと、迎える人もいないアパートの部屋に戻った。 氷河のマンションを出たのは明け方だったのに、時刻は既に昼近くになっていた。 どういう経路で部屋まで辿り着くことができたのか、瞬の記憶はおぼろだった。 瞬が、震える手で、ドアの鍵を開けようとしていた時。 ちょうど隣室の住人が勢いよく部屋から飛び出てきた。 「あれ、瞬? 面接試験の帰りか? なんだ、その顔! また、うまくいかなかったのか? ほんと、世の中って、見る目のない会社ばっかだな。元気出せよー!」 「星矢……」 星矢は、身寄りがないという共通項と年齢の近さも手伝って、日頃から親しく行き来していた隣人だった。 その、深刻さの全く感じられない明るい励ましに、瞬は無理に微笑を返そうとした。 返そうとしたのだが、こぼれてくるのは笑みではなく涙ばかりである。 半年後には社会人になろうとしている20歳を過ぎたオトナが情けないと思う間もなかった。 「星矢ーっっ !! 」 瞬は、まるで屈託というもののない隣人に、大声をあげて泣きついてしまっていた。 |