「氷河ーっっ !! 」

乱入者は、日本中の金融・保険企業が畏怖する企業格付審査請負会社の── 一介のアルバイターだった。

「てめー、俺のダチに手ぇ出したなーっっ !! 」

「星矢……?」

「なんか就職活動がうまくいかなくて落ち込んでるみたいだから、慰めてやろーとしたら、就職も何にも関係ないとか言うし、問い詰めてみたら、惚れた相手に誤解されただの、金髪の綺麗な男に嫌われただの言ってわんわん泣き出すし、そのバカたれの名前を聞いたら氷河だと! 貴様、手ぇ出していい相手と悪い相手の区別もつかないで遊び人気取ってんじゃねーぞっ!」

「おまえのダチだと?」

氷河が驚く間もなく、星矢を追いかけてきた“星矢のダチ”の登場である。


「星矢、待ってよ! どーして、星矢が氷河を知ってるのっ」

それは、まぎれもなく、数時間前に氷河を落胆失望させてくれた、就職活動中の一学生の姿だった。
そして、その姿を見て、驚愕したのは、氷河だけではなかったのである。

「瞬」(← 氷河)
「瞬」(← 一輝)
「瞬」(← 紫龍)

期せずして同じ名前をハモった3人は、ほぼ同時に、はっと我に返った。

「……なんで、貴様等が瞬を知ってるんだ?」× 3


「氷河……兄さん……紫龍……?」
瞬が、初めて訪れたオフィスビルの一室に、見知った顔ばかりを見い出して、きょとんと瞳を見開く。


「……と、いうことは……」
紫龍の呟きの先を続けたのは、烈火の如くに怒り狂った一輝だった。

「氷河ーっっ、貴様が手を出した他社の商品というのは瞬のことかーっっ !!!! 」


次の瞬間、氷河は、瞬の兄に殴り飛ばされていた。






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