潮が満ちてくることもない人工の浜辺に座り込んで、俺は、どれくらいの時間を過ごしただろう。

華奢の細腕のと言われても、仮にも瞬は聖闘士である。
意識を取り戻していることはわかっていたが、俺は瞬に何も言わずにいた。
言うべき言葉も思いつかなかった。


先に、瞬が口を開く。

「人は――どうして人は、人を好きになるんだろうね」
身体を起こさずに、星空を見上げたまま、瞬は言った。

「その人がいないと生きていけないような気になる。何を見ても、何を聞いても、その人に繋がっていって、他のことが考えられない。いつも、自分を――自分だけを見ていてほしいって願って……」

瞬の“それ”が俺だということが驚きでもあり、当然のことにも思える。
俺はむしろ、瞬の中にもそんな気持ちが生まれることがあるという事実が意外だった。

「こんなの、いいことじゃない。いいことじゃないってわかってる。わかってるのに――」

少なくとも、俺は、瞬の“みんな”の中の一人ではなかったらしい。


本当に――それは、全く良くないことだ。
他の奴等なんてどうでもよくなる――。






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