あの闘いの日々から、長い時間が過ぎていた。 アテナの聖闘士たちは、それぞれに平和の時を謳歌する自分の場所を見つけ、今は、一見したところ常人と変わらない生活を営んでいる。 星矢は日本で、紫龍は五老峰で。 一輝は相変わらず放浪癖が抜けていないようだったが、それでも、日本のどこかに、自分の巣と呼べるようなものを、形だけは整えているらしい。 氷河と瞬も城戸邸を出た。 そして、彼等の仲間たちは、彼等がその生活の場を日本でもシベリアでもなく、ギリシャに置いたことを知らされて、ひどく驚くことになった。 二人のギリシャへの移住にはアテナの意思が働いているのかとも思ったが、そういうことでもなかったらしい。 氷河と瞬がギリシャに居を移してからも、氷河は時折来日していたし、紫龍も頻繁に帰朝していたので、古い仲間たちが顔を合わせることはないでもなかった。 しかし、瞬は──星矢たち青銅聖闘士がどこに行っていても、まるで彼等の港のように城戸邸で仲間たちを待っていてくれたあの瞬は――この十数年間、決して仲間たちの前に姿を見せようとはしなかった。 星矢たちが瞬に会うのは、十数年振り。 正確には14年振りだった。 瞬は、20代の後半、あと1、2年もすれば30歳になる──はずだった。 だが。 |