だが、初めてギリシャの氷河と瞬の家を訪れた星矢と紫龍を出迎えたのは、相応に歳を重ねた氷河と、闘いの連続だったあの頃とまるで変わらない──どう見ても10代半ばとしか思えない姿をした瞬だったのだ。

「瞬……?」

星矢と紫龍が言葉を失ったとしても、それは当然のことである。

二人並んで、古い友人を迎えた氷河と瞬は、どう見ても10歳以上の年齢差があるように見えた。
年齢だけではなく──さすがにスラブ民族の血が入っていると言うべきか、星矢や紫龍の背など軽く追い越した氷河と、外見にまるで変化の見えない瞬は、その背丈も30センチ近い差があった。

「瞬……なのか? 瞬の子供……? いや、そんなはずは……」
理論の上でなら、瞬に似た瞬の子供がここに存在することは可能である。
瞬の髪の毛1本、細胞の1つだけでも他人の手に渡すことを許しそうにない氷河という男の存在を無視すれば。

「久し振り……。星矢、紫龍」

聞き覚えのある声で名を呼ばれ、星矢と紫龍は、今自分たちの目の前にいる子供が、彼等の旧友なのだということを認めた──認めざるを得なくなった。

氷河が、十年以上もの間、彼の仲間たちを瞬に会わせようとしなかった訳がわかったような気がした。
何か不都合が──常軌を逸したことが──、瞬の身の上に起きていたのだ。


こんな事態に至った経緯は、星矢にも紫龍にも想像することすらできなかったが。






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