アテネ郊外、海に近いグリファダ地区の白い壁の家──が、氷河と瞬の住まいだった。
クリスマスが近いこの時期、例年ならアテネはかなり寒いのだが、今日は陽射しも暖かく、海風もほとんどない。


驚く星矢と紫龍を、瞬は、その小綺麗な家の客間に案内した。

おそらく、花の季節には瞬が手入れをしているのだろう、客間の窓からは、客の目を楽しませることができるように造られた中庭の花壇を見ることができた。
もっとも、これまでにただの一度でも、この家が来客を迎えたことがあったのかどうかは疑わしいところだったが。


「おま……君──いや、おまえ、ぜ……全然変わってないぞ……?」
なんとか言葉と声とを取り戻した星矢が、使用する人称代名詞に悩みながら、再会の挨拶(?)を口にする。

「本当に、瞬なのか?」
変わり果てた友人にならともかく、以前と何も変わってない瞬の姿を目の当たりにした紫龍からも、まともな口上は出てこなかった。

彼等にしてみれば、この現実は、若返りの泉に浸かって子供に戻ってしまった同年代の友人に出会ってしまったようなものだったのである。


「びっくりした! 瞬、おまえ、吸血鬼か何かなんじゃないか? 全然歳とってないぞ!」
「うん……」
「小さくなった──わけじゃないのか。小さくて可愛いまま……子供のままだ」
「うん……」

言葉遣いは多少は大人びていたものの、星矢は幾つになっても星矢である。
驚きを隠そうともせず、だが、鷹揚に、星矢はあっさりと、まるで成長していない瞬を瞬と呼んでみせた。

紫龍の方は、この短時間では、とてもそこまで柔軟になることはできずにいたが。






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