結局、星矢と紫龍は、久し振りに会えた古い仲間と、昔話の一つもできないままで、彼等の家を辞することになった。
もっとも、この短い訪問で、氷河と瞬の事情を察するには――察するだけなら―― 十分な情報を得ることはできていたが。

「びっくりしたなー」

帰路の車を運転してるのは星矢だった。
紫龍は本当は運転を替わりたかったのだが、車の持ち主にそんなことを言うわけにもいかず、なんとか助手席で、星矢の粗忽な運転に耐えていた。

「氷河が俺たちを瞬に会せうとしないのは、氷河が瞬の独占を企んでいるだけのことなんだと思っていたが、案外、俺たちに会いたくないと思っていたのは瞬の方だったのかもしれないな」
「……全然変わってないんだもんな。あれは……誰だって驚くよな」

そう呟いてみせる星矢は、中身は以前のままで、外見だけは見事に20代後半の“大人”になりおおせている。

同い年の星矢を見詰める瞬の切なげな眼差しを思い出して、紫龍は静かに瞑目した。






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