だが、表情と感情をなくしてしまった氷河に、仲間たちの反応は冷たかった。

「馬鹿なことをしたもんだな」
と瞬の兄。

「だいたい、瞬を独り占めしようなんて考えるのが変じゃん。みんなで遊んでる方が楽しいに決まってるのにさー」
と星矢。

「まあ、星矢には、氷河の気持ちはわからないだろうな」
と紫龍。

「みんな、そんなこと言わないでよ。仲間でしょ」
彼等が、本心からそんなことを言っているはずがない。
そう思って、瞬は、顔をしかめながら仲間たちをたしなめた。

「んなこと言ってもさー。ヒントとかないのか、その、卵が隠されてるとこってのに。この村の中なのかどうかもわかんないんじゃ、探しようがないじゃん」
「氷河の魂が、強く美しくなれるところって言ってたけど……」
「魂が強く美しくなれる場所……って、天国かどっかのことじゃねーの? そんなとこに探しに行くのは無理だぜ?」

「…………」
言われてみれば、確かに星矢の言う通りである。

たとえ、あの水晶の卵がこの村の中にあるのだとしても、あれほど小さい卵を探し出すのは、至難の技ではあるに違いないのだ。

仲間たちの冷たい反応にも、氷河は無言で無表情である。
こういう時、ものごとを悲しむ魂や心がないということは、確かに都合のよいことなのかもしれなかった。

「氷河の魂を探すより、俺たちが生きることの方が先だろ。俺、今日は、村の集会所用の薪拾い、頼まれてるんだよな」
「ああ、そう言えば、俺も、今日中に片付けなければならない仕事がある」
星矢のぼやきを聞いた紫龍までが、そう言って肩をすくめる。

瞬たちは、村の人々から仕事をもらい、その代償として、この村の大人たちに養ってもらっていた。

星矢たちの言い分は、当然のことではあった。
それは、瞬にもわかっていたのだが、まるで仲間を見捨てるような彼等の言葉に、瞬は腹を立てずにはいられなかった。

「い……いいよっ。みんなが力を貸してくれないのなら、僕だけで探すから! 氷河、行こ!」

瞬は、星矢たちを怒鳴りつけて、氷河の手を取ると、仲間たちをその場に残し、とりあえず、瞬が知っている、村でいちばん綺麗な場所に向かった。






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