氷河と星矢のやりとりに、瞬の戸惑いは、更に深くなっていた。

一緒にいたい。
一緒にいられる時間を楽しいと思い、幸せだとも思う。
そして、自分がそうであるように、幸せでいてほしい。

そういう感情と願いを、瞬は、星矢にも氷河にも同じように感じ、抱いていた。

友人、仲間、兄弟、恋人──。 
瞬にとって、それらは、どれも大切で大事にしたい関係であり、決して失いたくない繋がりだった。
無論、優先順位もない。

だが、優先順位はなくても、違いはあるはずである。
そして、恋人という関係は、他の関係とどう違うのだろう。
星矢の言うように、寝るか寝ないか、寝たいと思うか思わないかが、唯一の違いだとは、瞬には思えなかった──思いたくなかった。

その答えがわからないまま、それでも瞬は、氷河が本気で怒ってるのだけは感じとれていた。
そして、瞬には、それがなぜなのかもわかっていなかった。
星矢の軽口に、なぜ氷河が本気で怒るのか──。

それは、笑い飛ばせば済むはずのことだった。
星矢は、“恋”を知らずに、そんなことを言っているのだから。






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