「んじゃ、花火やろーぜ! 氷河、まだ何か文句あんのか?」
「……ない」
「最初っから、そう言やいいんだよ。瞬、先に庭行っててくれよ。俺、バケツに水汲んでくから」
「うん」

星矢は、今は、喧嘩よりは花火の方に心惹かれているらしい。
中断させられた喧嘩を惜しむでもなく、星矢は、浮かれた足取りでラウンジを出ていった。

そんな星矢を見送ってから、瞬は小さな声で氷河の名を呼んだのである。
「氷河……」
「なんだ」

その答えがわからないことが──恋と友情の違いがわからないことが──氷河への侮辱になるのではないかと怖れつつ、だが、正直に、瞬は氷河に告げた。

「僕は……僕も星矢が好きで、一緒にいると楽しい。星矢のためになら命を懸けることもできると思うし、幸せになってほしいと思う。氷河もだよ。何が違うんだろうね、氷河と星矢」
「…………」

「違うことはわかるんだよ。僕は、星矢と、あの……あんなことはしたくないから。自分の弱いとこをさらすみたいだし、星矢とだと、あんな気持ちにはなれないと思うし――。でも、どう違うのかがわからないんだ」

寝るか寝ないかの他に何かあるはず──だということは、瞬にもわかっていた──感じていた。
だが、瞬はどうしても、“それ”を、正しく表現する言葉を見付けることができなかったのだ。

「あんな気持ち?」
「あ、うん。……僕、自分が消えてなくなってもいいような気持ちになるんだ。こう……氷河の中に溶けちゃってね、それでも、自分はちゃんとずっと存在してるみたいな、そんなふうな感じ――。うまく言えないけど。甘え……なのかな、あれ。夜だけじゃないんだよ。夜は特にそうだけど」

瞬の懸念に反して、氷河は瞬の困惑を責めたりはしなかった。
薄く笑って瞬の肩に手を置く。
瞬の答えを、氷河は既に受け取っていた。


氷河が、本気で星矢に憤りを覚えたのは、まさに、星矢が瞬と寝てもいいと言ったせいだった。
星矢がそう思ってしまえること自体が、氷河は不愉快だったのである。

その行為の先にあるものに、星矢が気付いていないのだとしても。






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