「まあ、親兄弟や友人は、永遠に一緒にいることではなく、むしろ独立や自立を願うものだからな」
紫龍が、氷河の代わりに、このやりとりに落ちをつけるべく、そう言う。

言ってから、彼は、
「そんなら、俺だって、瞬に恋してることになるぜー。俺も瞬とはずっと一緒にいたいもん」
という、星矢の言葉に、ぎょっとした。

氷河が、ぴくりと、こめかみを引きつらせる。

「星矢、冗談はやめてよ」
「言ってみただけじゃん。男はやっぱり、愛だの恋だのより、友情第一だよな!」

瞬にたしなめられた星矢が、ほとんど反省の色もなく、きっぱりと断言する。
恋とはどんなものなのか──その答えを知りたいとも思わず、探ろうともしない星矢には、それは考えるまでもない、当然の結論だった。――今は。

鈍感かつ奥手に過ぎる星矢に、紫龍たちは溜め息をつき、同時に、星矢の鈍感ぶりに感謝もしたのである。
氷河の場合は、その溜め息の中に安堵の思いも混じっていたかもしれない。

星矢が恋敵になるような三角関係など、氷河は御免被りたかった。
本音を言うと、星矢の一途さに必ず勝てるという自信がなかったせいもある。

星矢が瞬を求める気持ちよりもずっと、自分が瞬を必要とする思いの方が強いということはわかっていたのだが、それでも──。






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