「瞬。おまえは俺が好きなんだよ」 氷河は、今は自信を持って、瞬にそう言い切った。 「でも、僕は……」 瞬は、まるで信じられないと言わんばかりの目を氷河に向けてきたが、氷河はもう瞬の嘘など信じる気にもならなかった。 「俺がそう思うんだから、そうなんだ。おまえは、俺を世界中の誰よりも好きなんだよ」 「いや、瞬は別にそこまでは言っていないと思――」 余計な口をはさんでくる長髪男の膝を思い切り蹴りあげてから、氷河はもう一度繰り返した。 「瞬。おまえは、おれが好きなんだ」 「でも……」 瞬が、心許なげな目を、氷河に向けてくる。 氷河は、自信満々の様を装って、その瞳を見詰め返した。 大事なのは、瞬にそれを信じさせることだった。 「おまえ、俺の言うことが信じられないのか」 「そんなこと……ただ……」 「ただ?」 「もし、ほんとにそうなのなら、嬉しすぎるから……」 「俺もだ」 瞬は、やっと、自分の嘘が真実だったことに気付いてくれたものらしい。 そして、氷河は、瞬に出会ってから初めて、その瞳に不安の色が全くない瞬を抱きしめることに成功した。 |