「おまえら、人のいるところでいちゃつくのは後にしろ。それよりも、おい、その病院、臭くないか?」
「え……?」

やっと真実の恋人をその腕に抱くことができた恋人同士の間に水をさしたのは、二人の月下氷人たる某長髪男だった。
その場の話題が、突然きなくさい方向へと向きを変える。

「瞬、おまえは世間知らずだから知らないだろうが、患者をわざと昏睡状態にして、延命治療の名目で金を搾り取ろうとする悪徳医師なんてのも、この世には存在するんだよ。一輝がやってたヤバい仕事とやらを、その病院の医者が知っているというのが、そもそも変な話じゃないか」
「あ……あの……でも、あのお医者さん、僕の家の買い手も探してきてくれて、治療費が工面できなくなったら、僕にお仕事を世話してくれるって言ってくれて、すごく親切なお医者さんで――」

瞬の説明を聞かされた氷河と紫龍が、揃って、ひどく嫌そうな顔になる。
病人を治療するのが本来である医者が、どういうツテで、どんな仕事を、患者の家族に斡旋するつもりなのか、考えただけでも胡散臭すぎるではないか。

「――うちの弁護士に調べさせる」
「それがいい。その医者、ヤクザあたりと繋がっているかもしれないぞ」

その手の仕事は、瞬よりもむしろ、人を騙すのも傷付けるのも――それが善人でないのなら――屁とも思わない男たち向きの仕事だった。







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