「とにかく、これで問題は解決したわけだ」 高校生の頃にはとっくに己れの目的地をはっきりと定めていた氷河が、彼の目的地の肩に手をまわし、うなじに唇を埋める。 「城戸先生、ここは学校です!」 通信簿を取り戻してやった氷河への、瞬の返礼は、ぴしゃりとした拒絶だった。 瞬は、今は教師でいたいらしいらしい。 “城戸先生”には戻りきれずに、氷河は大きな嘆息を漏らした。 氷河が、どうしても生徒たちを好きになれない──なれるわけがない──と思っている本当の理由は、実は彼等が氷河の恋敵だからだった。 彼等は、瞬を、完全に氷河だけのものにしておいてくれない。 やっと卒業してくれたかと思うと、すぐにまた別の彼等が瞬の前に現れて、瞬の心の一部を占め始めるのだ。 氷河にとって生徒たちは、氷河の行く手を邪魔するために毎年出現する空気抵抗のようなものだった。 子供が大人になり、生徒が教師になっても──人がどれだけ歳を重ね、経験を積んでも──空気抵抗は存在し、また、新しく生まれ続ける。 そして、だからこそ人は、空を飛び続けることができるのかもしれなかった。 Fin.
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