イタキのオデュッセウスの木馬の計略により、トロイが落城したのは、それから数ヶ月後のことである。

ヘクトルを失い、パリスを失ったトロイで、アエネアスはトロイ軍を指揮し、その作戦の巧みさはヘクトルを凌駕するとまで言われるようになっていた。
パリスの死後、ヘレンは、ディポボスの妻となっていたが、彼女がパリスの次に選んだ男は真に愚かな男で、トロイ落城の折、メネラオスに殺されている。

トロイの王が殺され、その王女たちが、あるいは自決し、あるいはギリシャの武将たちに陵辱を受ける中、ヘレンだけは夫であったメネラオスと共に無傷でスパルタに帰還しているが、その後の彼女の人生はつまびらかには伝えられていない。

トロイ落城後、アエネアスは生き残ったトロイの人々を率いて西に逃れ、その地に、ローマ帝国の礎ともなるラヴィニウムの町を作った。
やがて、その町は、パックス・ローマーナ ──ローマの平和──と呼ばれる、戦のない平和な一時代を築くのである。

アエネアスが、生き延びた同胞たちと共に陥落したトロイの港を出た時、その船に、ヒョウガとシュンが同乗していたかどうかは、定かではない。






Fin.






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