短い夏が終わり、森が金色に輝く秋が駆け去り、シベリアの森には、再び白い冬が訪れていました。

その年の冬は特に寒さが厳しく、森では、動物の数がどんどん減っていました。
シュンがいくら狩りの名手でも、ないものは狩れません。

最後に野ネズミを食べた日から1週間。
その間、北の白い大地ではずっと、激しい吹雪が吹き荒れていました。
シュンのエサになる動物たちは、彼等のねぐらの奥にじっと身を潜ませて、吹雪が通り過ぎるのを待っていたことでしょう。
それはシュンも同じでした。

数日間続いた吹雪がやっと止んだ月の夜、シュンは、飢えに飢えて、自分の巣穴を出ました。
けれど、シュンの命を永らえさせるための命の気配に、シュンはなかなか巡り会うことができません。
気がつくと、シュンは、白い森の外れにやってきていました。

──あの美しい青年の家が、目の前にあります。
家畜小屋では、何十頭もの羊たちが、夜の寒さを少しでも和らげようとして身体を寄せ合いながら眠っていることを、シュンは知っていました。

おいしそうな匂い──温かい命と血の匂い──が、降り積もった雪の上を走る風に乗って、シュンの許に届けられます。
まるで引き寄せられるようにふらふらと、シュンの足は、羊たちのいる小屋に向かって歩みを始めていました。

他の動物の命を奪うための牙も爪もない人間に殺される甘美な夢に酔いながら、シュンは、夏と秋を無為に過ごしてきました。
その間にも、シュンはたくさんの小動物の命を奪ってきました。
彼等の命の火が消える時の様子を思い出すと、シュンの胸はいつも、きりきりと激しく痛みます。

もう、あの美しい人間に憎まれることなく殺されたいなどという甘い夢を夢見るのはやめようと、シュンはついに決意しました。






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