「あのさぁ、瞬。おまえ、氷河が嫌いなの?」
「好きでいるように見えるわけ?」
瞬の面接官役を振られたのは星矢だった。
面接官の質問内容が気に障ったのか、瞬は最初から喧嘩腰である。

ここで嘘を言っても始まらないと考えた星矢は、至って正直に、
「見えない」
と答え、瞬は自らの怒気を隠そうともせずに、
「断言できるんなら、わざわざ訊かないでよ」
と言って、そっぽを向いた。

星矢としてはもう、溜め息をつくことしかできなかったのである。
彼は、くしゃりと顔を歪ませて、瞬に再度尋ねてみた。
「おまえら、なんでこんなに仲悪くなっちまったんだ?」

それは、氷河と瞬の仲がこうなってしまった根本原因を探ろうとする星矢の試みだった。
十二宮での闘いが終わる頃までは、氷河と瞬の仲は極めて穏やかで、むしろ親密でさえあった。
二人の間にいったい何があって、氷河と瞬がこんなことになってしまったのか、星矢は不思議でならなかったのである。

残念ながら、根本原因を探る星矢の問いに対する瞬の回答は、謎の解明に繋がるヒントすら与えてくれなかったが。
「氷河がいちいち僕に突っかかってくるんだもの! 僕が右って言えば左、白って言えば黒、海って言えば山! 氷河って、ほんっとに可愛くないんだからっ」

『それはおまえも同じだろう』とは言えなくて、星矢は、怒れるアンドロメダ座の聖闘士の前から、すごすごと引き下がった。






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