「いったいどうして、おまえと瞬は、これほど険悪な仲になってしまったんだ」

一方こちら、氷河の担当面接官は紫龍である。
彼は、まず、氷河と瞬の不仲の訳を探るところから入ったのだが、残念ながら彼もまた、事態の解決に繋がる答えを氷河の口から吐き出させることはできなかった。

「瞬が、事あるごとに俺に逆らうのがいかん。目上の者を立てるということを知らないのか、瞬の奴は」
「目玉焼きで目上も目下もないだろう。おまえ自身、目上と思ってもらえるほど出来た男じゃないし」
「何か言ったか」

紫龍は、少しばかり正直が過ぎたようだった。
そして、人間は、自分に関する事実──特に、褒められるようなことではない事実──には、立腹するようにできている。
氷河にぎろりと睨まれて、紫龍は内心で冷や汗をかいた。

「おまえと瞬は、もう少し仲良くなれないのかと言ったんだ」
「瞬が今年の夏は山に行くと言ってきたら、少しは仲良くしてやってもいい」
「…………」

地上の平和と安寧のために命をも懸ける白鳥座の聖闘士とアンドロメダ座の聖闘士の喧嘩の何という低レベル。
にも関わらず、二人の間にそびえたつ壁の何という高さ、強固さ、堅牢さ。
昇龍覇はもちろん、亢龍覇をもってしても崩せそうにない壁に阻まれて、紫龍もまた早々に氷河説得を断念することになってしまったのだった。






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