「なななななななななんなんだよ〜っっ !!!! 」

ここで星矢に、静かに驚けと要求するのは無理な話だったろう。
星矢は遠慮会釈のない大声を、氷河の部屋に響き渡らせた。

「いったい、いつのまに……」
一見冷静そうに見える紫龍も、すっかり場を外す礼儀を忘れて、その場に棒立ちである。

闘いの真っ最中の氷河と瞬は、二人の闖入者に気付いても、それを中断することができなかったらしい。
星矢と紫龍は、実に全くどうしようもないほどぴったりのタイミングで、氷河と瞬のクライマックス直前場面に闖入してしまったのだ。

「や……やだ……氷河、やめないで……やめないで、動いてっ!」
一瞬動きを止めた氷河にしがみついて、瞬が悲鳴に似た声で訴える。
第三者に見られていることに羞恥を覚える余裕も、逆に興奮度を増すゆとりも、今の瞬にはないようだった。
瞬は、それほど切羽詰まっているらしい。

瞬が動けと言っているのである。
普段の氷河なら、即座に動くのを止めるはずだった。
しかし、瞬への反抗心だけを生き甲斐にしているはずの氷河が、今に限っては、即座に瞬の要望に従う。
というより、自分を止められなかったのは、氷河の方だったらしい。

それでも、氷河は、喘ぎ乱れている瞬の姿を仲間たちの目から隠すことを考えたようだった。
彼は、ベッドの脇に押しやっていたベッドカバーを手に取ると、それを大きく広げるようにして部屋のドアの方に放り投げた(瞬とは繋がったままで)。
と同時に小宇宙を燃やし(もちろん、瞬とは繋がったまま)、そのカバーを凍らせて(当然、瞬とは繋がったまま)、彼は、部屋のドアとベッドとの間に、凍った白いカーテンを作ってしまったのである(無論、瞬とは繋がったまま)。

星矢たちの視線を遮ることに成功すると、白い凍ったカーテンの向こうで、氷河は瞬を激しく突き上げた──らしい。
クライマックスを迎えた瞬の歓喜の声は、氷のカーテンにも隠しきれるものではなかった。


その声を聞かされ、はっと我にかえった星矢は、遅ればせながら、かつ 改めて、大々的に顔を真っ赤に染めあげた。
それが、怒りのためだったのか、昼日中から男同士の絡み合いを見せられたせいだったのかは、星矢自身にもわかっていなかったことだろう。

「お……終わったら、ラウンジに来い。話がある!」
白い壁の向こう側にいる、たった今終わったばかりの二人に向かってそう怒鳴ると、星矢は、どかどかと乱暴な足取りで、氷河の部屋を後にした。






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