僕が最初に思い出したのは、血の色だった。
それを『思い出した』と言っていいものなのかどうかは、僕自身にもわからなかったけど。


僕が身に着けている白い浴衣は、いつのまにか真紅のそれに変わっている。
人の血の、あの ぬめりとした感触を手に感じて、自分の手を目の前に持ってくると、それは予想した通りに、べっとりと赤い血で濡れていた。

足元に、誰かが倒れている。
それは僕が倒した敵の一人らしく、大地に血を吸わせながら、彼は、今にも最期の呼吸を終えようとしていた。

助け起こそうと──僕は思ったんだ。
崩れ落ちるように、僕は、横たわる男の脇に膝をついた。
真っ赤な手を彼の肩に伸ばそうとした手が、目的の場所に辿り着く前に強張り、止まる。

僕が倒した“敵”は、兄さんの顔をしていた。

僕は、悲鳴をあげた──と思う。






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