瞬と交わる夢を、以前は毎晩のように見ていた。
瞬を実際に我が物にするまで、その夢の中で瞬を組み敷いているのは、いつも氷河自身だった。

だが、瞬を抱くことが現実の世界で可能になってしまってからは、氷河は、上総介の下で喘ぐ瞬の夢ばかりを見るようになってしまっていた。
そんな夢から目覚めたあとには、それが夜半だろうが、朝方だろうが、氷河はすぐに再び瞬に挑みかかった。
そうせずにいられなかった。

瞬を貫く時にはいつも、
「おまえは俺のものだ」
という言葉を、瞬と自分自身に言い聞かせるように繰り返した。

そのたびに、瞬は、自分を押し潰そうとしているような氷河の身体にしがみつき、掠れた声で、
「はい」
と答え、頷いてみせる。

その返答がいつも即座で、いつも同じ答えだったために、氷河にの耳には、それがひどく空々しいものに聞こえてならない。
氷河の乱暴な愛撫や挿入を、少しでも穏やかなものに変えるための方便にも思える。
そう思うと、瞬が愛しい者ではなく、怒りを静めるための道具に思えてきて、氷河はますます深く、瞬の中を抉ることになのだった。


氷河は、自分自身を制御することができなくなっていた。
瞬が愛しい時と憎い時、そのどちらの時も、そのどちらの感情も真実で、抑えようがない。
氷河の波のある感情と愛撫に翻弄され、だが、瞬は決して氷河に逆らうことをしない。
仮にも武士なら耐え難い屈辱であろうようなことも、瞬は諾々と氷河の指示に従ってみせた。
拙い所作で、瞬は氷河の性器に奉仕することさえしてのけた。

氷河には、そんな瞬の心が理解できなかったのである。
瞬をいずれ主君の手に渡さなければならないという事実より、瞬の心が見えないことの方が、氷河をますます狂わせた。






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