それがどこなのかわからない──何もない白い空間を、瞬はひとりで漂っていた。
人の気配を感じて辺りを見回そうとした瞬の前に、いつのまにか氷河の姿がある。
見詰められていると意識が遠のくような氷河の青い瞳──が、そこにあった。

長い時間が過ぎたのか、それとも氷河の姿を認めてすぐのことだったのか──気がつくと瞬は彼に抱きしめられていた。
しかも瞬は、その身に衣服をまとっていなかった。
どうして僕は逃げないのだろうと、氷河の腕の中にいる瞬は自分自身を訝っていた。

「瞬」
氷河に名を呼ばれる。
なぜか瞬は、自分はその声に逆らうことはできないのだということを知っていた。
瞬自身は、自分の身体を自分の意思で動かせないことを不審に思っているのに、瞬の意識の宿っている身体は氷河に抱きしめられることを喜んでいる。
そうとしか思えない反応を、瞬の身体は示し始めていた。

瞬の意識が自分の意思で動かすことのできない身体に戸惑っているうちに、それは勝手に氷河の前に自らを開いていく。
まるでそれが当然のことのように彼の前に開かれた瞬の両脚の内側に手を添えて、氷河は更に大きく、それを押し広げた。
そして、瞬の上にのしかかってくる。
目を固く閉じているのに、瞬には氷河の瞳の色が見えていた。

彼が何をしようとしているのかに気付いた瞬は、本能的な恐怖を覚え、氷河の重みから逃れようとしたのである。
だが、瞬は、氷河に逆らえない自分自身をどうすることもできない。
氷河の瞳は相変わらず痛みを感じるほどに冷たく、瞬の心を萎縮させる。

「やだっ!」
その瞳に逆らって声を発することができたのが、奇跡にも思えた。
自分の声に驚いて、瞬は目覚めた。

「あ……」
瞬の心臓はありえないほど強く大きく速く鼓動し、瞬の身体は熱く火照っていた。
自分の見ていた夢がどういうものだったのかを悟り、瞬は愕然としたのである。

その夜、瞬は、再び眠りにつくことはできなかった。






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