その部屋の窓際にある寝台の上に、氷河が仰臥していた。
むしろ、倒れていた──と言った方がいいのかもしれない。
彼の頬は死んだ人間のように青ざめていて、閉じられた瞼も、北の国の大地を覆う氷のように青白かった。

そんな氷河の姿を、瞬は以前どこかで見たことがあるような気がした。
その時、瞬は、氷河を助けたくて、氷河に死んでほしくなくて、自分の命の全部で彼を抱きしめ、持っている力のすべてを彼に与えたのだ。

冷たい氷河の頬に、最初は指先で、それから手の平で、触れる。
途端に瞬の中に何か大きなうねりのようなものが生じ、それは、氷河の頬に添えられていた瞬の手から氷河の中へと流れ込んでいった。
その力が何なのかを瞬は知っていた──思い出した。
「僕は……」

瞬は、氷河の上体をゆっくりと抱き起こすと、その身体にすがるようにして、彼を抱きしめた。
あの冷たい無人の宮で、かつての瞬がそうしたように。






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