「あああ……っ!」 まだ完全に身体の萎縮を解くことができずにいたシュンの中に、ヒョウガが無理矢理それを捻じ込んでくる。 その衝撃に引き裂かれるはずだったシュンの身体は、だが、痛みや恐怖よりも はるかに強い力によって歓喜の悲鳴をあげていた。 自分が少女であったなら彼の妾妃になることもできていたかもしれないのに――と、胸の奥にしまい込んでいた切ない悲願が、こんなふうに叶えられてしまったのだ。 「いや……だめ、いた……い……ああ、だめ……っ」 王の私室の窓の向こうでは 太陽がその姿を隠そうとしている。 シュンは、自分が何を口走り始めているのか、もはや理解していなかった。 「つらかったら、俺にしがみついていろ」 「ヒョウガ……どうして……いや、こんな……ヒョウガっ!」 シュンの身体は尋常でない熱を持ち、その心より早くヒョウガを受け入れ始めている。 思いがけない激しさでヒョウガ自身に吸いつき絡みついてくるシュンの内奥を 意外と感じたのは一瞬。 シュンがそれを望んでいたことを、ヒョウガはシュンの中で初めて知った。 「おまえは俺が好きか」 逸る気持ちを抑え、ヒョウガはシュンに尋ねた――初めて、尋ねた。 これまで、どれほど真剣に尋ねてもシュンからは屈託のない『好き』という答えしか得られないだろうと諦めていたことを。 シュンが、喘ぐようにヒョウガに頷いてくる。 この肯定は、友人としての肯定ではないはずだった。 シュンは今ヒョウガに犯されている。 少なくとも、その行為を受け入れられるほどには『好き』だと、シュンは告げているのだ。 ヒョウガは、必死に彼に絡みついてくるシュンの腕と内奥の肉とに 自分の恋が空しいものではなかったことを知らされて、安堵のようなものを覚えた。 では、これは、シュンにとって理不尽な暴力にはなっていないのだ――と。 同時に彼は自らの気を引き締めた。 シュンへの暴力はこれから始まる――始めなければならないのだ。 「言葉で答えろ」 「好……き……」 「もう一度」 「ヒョウガが好き」 「そう、それを繰り返していろ。そうすれば、痛くなくなる」 何の根拠もない暴行者の言葉を、シュンは素直に信じたらしい。 ヒョウガに言われた通りに、シュンはその言葉を口の端にのぼらせた。 「ヒョウガ、好き」 「ああ、上手だ」 シュンの髪を撫でながら、ヒョウガは目を細めた。 神々の住む天上界にも これほど可愛い生き物は存在しないに違いないと確信して。 シュンの甘い言葉に酔ってばかりもいられないことをヒョウガに思い出させたのは、部屋の扉の向こうで言い争っている複数の男たちの声だった。 ヒョウガの従卒は、王の私室で何が行なわれているのかに、とうの昔に気付いていただろう。 シュンを迎えに来た神官たちにその事実を知らせるわけにはいかないと、懸命に神殿からの迎えの者たちを押しとどめている。 だが神への忠節を人としての義務とも思い込んでいる神官に、所詮 王よりも神を畏れている従卒は、まもなく押し切られるに違いない。 非常に不本意ではあったが、ヒョウガは、この場面を神官たちに見せつけて、シュンから神への供物としての資格が失われたことを 彼等に示してやらなければならなかった。 ヒョウガを少しでも深く身の内に取り込もうとしているシュンの身体に逆らって、ヒョウガは一度それを引き抜いた。 「ああ……!」 シュンが、耐えられないほどの絶望に襲われたように切なげな声を洩らす。 「これが欲しかったら、もう一度 俺の名を呼ぶんだ」 「ヒョウガ――」 シュンの意思は既に、ヒョウガの言葉に逆らうことのできない自身の身体に抗することができなくなっていた。 欲しいものを手に入れるために、シュンの唇は、ヒョウガに命じられるまま、その名を声にする。 飼い主に従順な小動物に褒美を与えるように、ヒョウガは再びシュンの中に押し入り、欲しいものを与えられたシュンは歓喜と安堵の声を室内に響かせた。 絶望と期待と歓喜――それらのものが繰り返しシュンの身体と心を襲ってくる。 「あっ……あっ……ヒョウガ……ああっ」 シュンの喘ぎは、ヒョウガの動きに沿って間歇的なものになり、それはいよいよ熱を帯び、うわ言めいた子供の泣き声のようなものに変わってきていた。 扉が開かれ、神官たちが王の私室に踏み込んでくる。 「ヒョウガ、好き……ヒョウガ、好き。僕はずっとヒョウガにこうされたかったの……っ!」 アテナの神殿に仕える者たちが その場で見たものは、王に犯されている神への供物が 身体をのけぞらせ、その白い腕を王の背に絡みつかせている様だった。 そして彼等の耳が聞いたのは、呼吸をするのも苦しげに喘いでいるシュンの唇が発する浅ましい言葉。 「なんということを!」 神官たちの糾弾の声に挑むように、ヒョウガは、僅かに後ろに引いていた身体に勢いをつけて、シュンの中に彼の性器を押し込んだ。 「あああああっ!」 ひときわ高い悲鳴がシュンの喉から迸る。 その声は、誰にでも聞き取れるほど明瞭に、歓喜の響きを載せていた。 |