「瞬っ!」
氷河がノックもせずに飛び込んでいったのは、無論、彼自身の部屋ではなく、彼の部屋の隣りにある瞬の部屋の方だった。
瞬は、滅多に使われることのない彼のベッドを椅子代わりにして、ぼんやりと何事かを考え込んでいたらしい。
突然現われた金髪の仲間の姿に 僅かに目をみはり、しかし、すぐに微笑を作ってベッドから立ち上がった。

「どうしたの、そんな息せき切って。僕、これから氷河の部屋に行こうと思ってたのに」
乾きかけた瞬の髪から花の匂いがする。
清潔で、だが、だからこそ不思議に性的な感覚を刺激する瞬の様子に、氷河はくらりと目眩いを覚えた。
「あ? ああ……」
瞬は、“いつものこと”をするための準備を、いつもの通りにしていてくれたものらしい。
すべてがいつも通りであることに、氷河は当惑したのである。

「待ちきれなくて、迎えにきた……」
「せっかちな氷河」
その場に棒立ちになった氷河の胸に、瞬が 苦笑しながら指を伸ばしてくる。
瞬はいつもより少し積極的だったかもしれない。
隣室に移動する時間も惜しくて、氷河は後ろ手に瞬の部屋のドアを閉じ、その手でまだ少しお湯の温もりの残る瞬の身体を抱きしめた。






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