「今よりずっとあとの時代に、雄略天皇という馬鹿な天皇がいたんだ。で、その馬鹿が妃に迎えた女がたった一夜の同衾で子を身籠った。それは自分の子じゃないんじゃないかと疑った馬鹿天皇は、家臣に相談したんだが、事情を聞いたら、雄略はその女と一晩に7回もしたとかで、家臣は『それで自分の子じゃないと疑われたんじゃ、妃が気の毒だ』と、その馬鹿を叱りつけたんだそうだ」
「やだ……」

ぐったりしてはているが、瞬の意識は明瞭なようだった。
氷河が瞬にそんな話をして聞かせたのは、あまりに乱暴かつ性急にコトに及んだことを瞬に責められるのを懸念したせいであり、同時に『7回は多いが ないことではなく、2、3回は普通か控えめ』という“常識”を瞬に植え込むためだった。
氷河の目的は達成されたらしく、瞬は、自分の望みを叶えてくれた男の乱暴を責める素振りは全く見せなかった。
もっとも瞬は、今自分たちが幾度コトに及んだのかもわかっていないようだったが。

「日本神話というか、記紀はそういう下ネタ満載だぞ。日本は本来、性的に大らかな国だったんだ」
「そうなんだ」
なにしろクシナダ姫とスサノオという生き証人が、瞬の側にはいる。
瞬には、氷河の言葉を疑っている様子はかけらほどにも認められなかった。
瞬自身がそれを“良い事”だと実感したばかりなのだから、氷河のたわ言には説得力もあったろう。

「聖闘士である俺が、そんな馬鹿天皇に負けてはいられないと思わないか」
そう言って氷河は再び瞬をその気にさせるべく、瞬の内腿の間に手を差し入れた。
「あ……んっ」
瞬の声はすっかり艶めいていて、どう見ても氷河にそうされることを喜んでいる。
瞬はその内腿をぴったりと閉じ合わせることで、氷河の手を愛撫してきさえした。

ろくな防音設備もない この国、この時代。
何という素晴らしい世界だと、氷河は心から思ったのである。






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