304000カウント記念小説


304000カウントをGETしてくださったのは、カモンさん。


お題は、

天守物語』をベースとした氷瞬話。


「シェークスピア劇等の演出で見られるように、舞台(世界)を移動させてしまっても構いません。日本でなくてもいいです。そして、ハッピーエンドで締めくくっていただければと思います」
とのことでした。

カモンさん、リクエストどうもありがとうございます!

さてさて、そういうわけで、泉鏡花、『天守物語』。
鏡花の『天守物語』は、愛と美だけが守られるべき唯一の法である魔の世界を描くことによって、人の世の不合理や不粋・醜さを浮き彫りにし、批判したお話……だと思うのですが、この解釈で合ってるのかな?
愛と美があれば、恋人同士は幸せになれる耽美な世界。
それこそが望ましい人の世のあり方、正しい人の感性のあり方――という物語(だと、私は解釈しています)。

んが、まあ、私が書くのは、どれだけ原作やアニメからかけ離れていても『聖闘士星矢』の世界です。
『聖闘士星矢』は人間の持つ愛の可能性を信じて戦う女神と聖闘士たちのお話ですから、現実世界の人間の愛や正義といった要素を否定するわけにはいきません。
そうなると、これがなかなか難しいのですね。正義と耽美を両立させることは。


そのせいかどうか、今回私が書かせていただいた話は、完全に『天守物語』を念頭に置いて書き始めた話であるにも関わらず、この話は何をベースにして書いた話かと人様に聞いてまわったとしても、『天守物語』と言い当てられる方は100人に1人くらいいらっしゃればいい方――な話になってしまいました。

敗因は色々ありますけども、まずもって、魔の世界の住人が人間界を意識しすぎているところが魔の世界っぽくない。
鏡花の描いた富姫は、人間の生き様に対してもっと超然としていたと思います。
人間とは価値観・感性が違っていた。

とはいえ、その富姫も元は人間で、人間世界の理不尽の犠牲者なのだということを考えますと、どうしても彼女の耽美には哀れが伴うわけでございます。
そこが、彼女の“人間離れした”美しさを ますます増しているというか何というか(ちょっと矛盾しているような気もしますが)。

――と、あれこれ書き立ててみたところで、今回私が書かせていただいた話に耽美の要素が足りないことは厳然たる事実。
難しいです、耽美。

耽美、耽美。
耽美 苦いか、しょっぱいか。
そが上に熱き涙をしたたらせて耽美を書くは
いずこのジャンルのならいぞや。

――な話になってしまいました、結局。
本当に本当に申し訳ありません(『秋刀魚の唄』も切ない恋の詩ですけども)。

ところで、このお題をいただいた時、私が最初に悩んだことは、富姫様と図書様の、どちらを氷河にして、どちらを瞬にすべきかということでした。
つまり、どちらを魔の物にして、どちらを人間にするかということ。
本当に悩んだんです、私。すごく悩んだんです、私。
悩んで悩んで悩み抜いた結果が、結局これ。
私はいったい何のためにあんなに悩んだのか、これこそ愚悩というものです(そんな日本語はありません)。

でも、まあ、おそらく、きっと、これが人生というもの。
悩んで明答に至れなかったことを無駄と断じてしまったら、人間が生きて存在すること自体が無駄だということにもなりかねません(自分で書いていて言い訳っぽくてならない……)。

んーと。
タイトルの『妣はは)の国』の『妣(ひ)』というのは『亡き母』という意味。
黄泉の国、根の国、他界、冥界等々、民俗学的には色々面倒な考察もあるのでしょうが、言ってみれば『女の国』、清らかであり穢れた国。
この話においては『子宮』をイメージしていただければよろしいかと。
フィーリングでつけたタイトルなので、あまり深く考えないでいただけると助かります。

人様からリクエストをいただいて書かせていただいた話に、ご希望をいただいたわけでもないのに、こんなえっちシーンを入れてよかったのかと、話を書きあげてしまった今でも迷いが抜けていません。
必要なシーンですし、省いてしまったら本当に清潔なだけの話になってしまうので、この話の中にあのシーンがあること自体は自然なことなのですが、あんな大胆な真似、私は黒い畑の瞬にもさせたことはないはず。
それをキリリク話で書いてしまう私を、カモンさん、どうか許してください。

でも、必要なシーンなんです!
(謝罪になっていませんね;)
(「サービスとして入れました」と言うことができたなら、その方がリクエスト対応としては正しいような気がします)


何にしましても、今回の話は耽美失墜した話。
バトルと耽美を両立させている星矢原作・アニメ星矢の偉大さをしみじみ思い知りました。
原作・アニメ制作の巨匠たちに平伏しつつ、カモンさんには今後の精進を誓いつつ、今はこれが精一杯。
どうかお許しください〜。

話がちょっと長くなりましたので、2部に分けました。お時間のある時に適当に分けてお読みください。





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