427000カウント記念小説


427000カウントをGETしてくださったのは、ティアさん。


お題は、

「『忘れない』をキーワードで」


「この場合の『忘れない』は、
『うっかりして物をおいたままにする』の対義語でも、『うっかりしてすべきことをしないままにする』の対義語でもなく、
『おのずと記憶がなくなる』の対義語、あるいは『思い出さないでいる、心にのぼらせないでいる』の対義語。
かつ、
『忘れられない』でもなく、『忘れたくない』でも、『忘れるものか』でもない、『忘れない』でお願いします。

人間は 忘れるものですし、逆に、特にマイナスの出来事を執念深く覚えていることや、忘れたくても忘れられないことで、自分を幸せから遠ざけたりしがちなもの。
人が 何を、なぜ、どうやって『忘れない』ことを選ぶのかということは、かなりその人間の本質を表す事柄のような気がしますし、その人の幸不幸にも、大きく関わってくることのような気がします。
誰が、何を、なぜ『忘れない』ことを選ぶのか。
きゃわさんなら どんな お話を書かれるか、非常に興味深いと思い、このお題に落ち着きました」

――とのことでした。

ティアさん、リクエスト、どうもありがとうございます!!

と、勢いよく お礼を言ってみましたが。
ティアさんからのリクエストメールを拝読して、私が いの一番に思ったことは、実は、
「む……難しすぎて、何が何だか わからない……」
だったのです。

今回のお題は、本当に最初から、どうやって逃げるかを考えたお題でした。
お題を熟読吟味し、あれこれ試行錯誤して、「よし、私には無理だ、逃げよう」と決意したことは、これまでにも幾度もありましたが、お題を読んで その1秒後に「これは逃げるしかないような……」と考えたことは、さすがの私も これまで一度もなかったかも。

私は、そもそも『忘れない』の意味がわからなかったのですね。
『忘れる』とか『忘れない』とかいうことは、人間の意思ではどうにもならないこと。
忘れたくないことほど忘れ、忘れてしまいたいことほど忘れられないのが、人の常。
過去を振り返って“忘れなかった”事実を確認することはできても、今 現在、人が『忘れない』と思ったところで、それは ほぼ無意味な行為です。
まず50パーセントの確率で、その考えは実現しない。
残り50パーセントの確率で、その考えが実現することはあるかもしれませんが、そうであったとしても、それを“今”確認することはできないわけですから、それもまた現在においては あまり意味のない行為であると言えるでしょう。

( ↑ 私が無意味だと思うのは、『忘れない』という事象について、です。
『忘れたくない(と思う)』『忘れるべきではない(と思う)』『忘れないだろう(と思う)』といった、人間の意思や願いを無意味だと言っているわけではありません)

――とまあ、そういったことを考えるほどに、これはもう 言葉遊びで(もしくは詭弁を駆使して)逃げるしかないだろうと、私は思ったわけです。

はい。
私は逃げました(堂々と言わないように)。
おそらく、今回の話は、ティアさんのご希望に沿ったものではありません。
大変 申し訳ありません。

いや、やっぱり、このお題は 私のオツムには難しすぎました。
『忘れたくない(と思う)』『忘れまい(と思う)』『忘れないだろう(と思う)』あたりなら どうにかなったかもしれないですが、『忘れない(ことを選ぶ)』の意義は 私にはどうしても わからなかったのです。
逃げると決めて開き直り、少し気持ちを楽にした上で、私なりに懸命に お題に近付こうと努力はしたのですが、これが精一杯だった――というのが、最も正確な事実報告かも。
本当に本当にすみません。

もちろん、人は、どんなことも『忘れない』というのが、(人間の意思とは関係のない)事実です。
記憶はすべて 脳に記録され、その記憶を取り出すためのシナプスの有無が、その記憶を人間の意識上に現前させることができるかどうかを決定する。
ですが、そんな話を氷瞬サイトのやおい話に起こしても、それこそ無意味というものでしょう。

今回の話は、逃げをかますにしても、可能な限り氷瞬話として楽しめる作品を作りたいという悪足掻きをしながら必死に書いた話です。
ティアさんには、寛大なお心でお許しいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

どうでもいいことですが、作中で氷河が読もうとしていたプトレマイオスの『アルマゲスト』の原書は、現在入手不可能な書籍です。
英訳本や仏訳本はあるようなのですが、原書(ギリシャ語版)は既に失われてしまった模様。
そんなものが普通の本屋さんで取り扱われていることは 更にありえないことなのですが、ストーリーの都合上 ご登場いただいた次第です。
ご了承くださいませ。
モーリス(言わずと知れた、英国パブリックスクールほも話)』と『モールス(去勢された元男の子の吸血鬼と人間の男の子の ほも話)』というのも考えたんですけどね……。

何はともあれ 今回は、あらゆることにごめんなさいです。
ごめんなさい。





427000カウント記念小説 入り口










MENUへ記念MENUへ9番目の花壇MENUへ