「いったい、どうなっているんだ? 蝶よ花よと育ててきた可愛い弟をかっさらわれて、ハラワタが煮えくりかえっているはずの一輝が、あんな、氷河を助けるようなことをするとは……」

一輝・瞬・氷河の三人が、とにもかくにも朝食を済ませて姿を消したダイニング。

シュールレアリスムな寸劇を見せられた面持ちの紫龍への星矢の答えは、オプティミズムの極致だった。

「瞬の仲良しさんと、自分も仲良くなろうって思ったんじゃねーの? へたすりゃ、これから一生モンの付き合いになるんだしさー」

「……あの一輝がか?」

そんなことであの一輝が、あの氷河に、歩み寄りの姿勢を示すことがあるだろうか。
常識的に考えても、非常識的に考えても、そんなことがあるはずがない。

B型大らか主人公の星矢も、さすがに今回ばかりは、自分の楽観的解答に自信を持ててはいないらしかった。
鼻の頭をこしこし擦りながら、両の肩をすくめる。

「氷河の奴、居心地悪そーにしてたなー」
「瞬がいなかったら、テーブルを引っくり返していたに違いない」

一輝ならぬ身の星矢と紫龍に推し量れるのは、一輝の親切に対峙した氷河がその胸に抱いた不気味な思いばかりだった。

結局、彼等は、一輝の真意を推測することすらできなかったのである。






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