星矢と美穂の喧嘩の原因は、ラーメンとハンバーガーだった――らしい。

要するに、某アクション映画を見終わった二人は、これからどこの店に入るかで揉めていたのだ。
星矢はラーメン屋で豚骨ラーメンを食べたいと主張し、美穂は某ハンバーガーショップで照り焼きチキンバーガーを食べたいと主張。
二人の意見はひたすら平行線を辿り、交わる様子は全くなかった。

「どーして、星矢ちゃんていっつもそんななのっ! たまには私の入りたいお店に付き合ってくれたっていいじゃない! 氷河さんなんか、何だって瞬くんの言う通りにしてあげてるわよっ。私、こないだも、あの二人をケーキ屋さんで見たわっ。瞬くんがケーキ4つも食べてるのに、氷河さんは自分では何も食べてなくて、でもすごく嬉しそうに瞬くんを見てたわよっ!!」

「そんなの当ったり前じゃんか! あそこんちは、氷河が瞬にベタ惚れで、瞬はそれに気付いてねーんだから!」

往来に大声を響かせて二人の争いはいつ果てるともなく続いていたが、瞬はその結末がどうなったのかについては、既に記憶がないそうだった。


とにかく、瞬は星矢と美穂のその言葉に、ハンマーで脳天を殴られたほどの大ショックを受けてしまったのである。
これまで不自然とも思わずに――故に、あったりまえのこととして受け止めていた、自分と氷河の行動が、実はとてつもなく不自然極まりないものだったのではないかという疑惑が、瞬の心の中に生まれてきたのだった。










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