瞬はいったい何者なのか──。
氷河がそれを知ることができたのは、いつものように、その不可解な儀式を終えて、神域から村人を送り出した瞬が、神殿への扉の前でふいに倒れた時だった。

「瞬!」
氷河は、瞬の名を呼んで、庭から神殿の板の間に駆けあがった。

隠れている必要性を、氷河は既に覚えていなかった。
こんな不気味な儀式を、どうすれば瞬にやめさせることができるのか。
その時、氷河が考えていたのは、ただそれだけだった。

氷河に抱き起こされた瞬が、氷河がこれまで何をしていたのかに気付いて、それでなくても血の気のない白い頬を、更に蒼白にする。
「どうして……? あ……駄目。誰にも喋っちゃ駄目。いいですか、命が惜しかったら、あなたは、ここで見聞きしたことを誰にも口外しちゃいけません!」
氷河の服の袖を、その細い指で掴み、瞬は必死の形相で氷河に訴えた。

『命が惜しかったら』
──瞬は、確かにそう言った。





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