外の世界からやってきた男と村の罪喰いが、罪喰いの儀式を重ねていることは、やがて村人たちの知るところとなった。 彼等は、瞬が言った通りに、その事実を歓迎したらしい。 氷河を自分たちの仲間と認定し、氷河に対する彼等の態度には親しみが増していた。 氷河が毎日のように罪喰いの儀式を重ねていることも、彼等は訝ってはいないようだった。 生まれ落ちてからこの村にやってくるまでの20数年間分の罪を、全部吐き出しているのだと思えば、連日の罪喰いの儀式が1年続こうと、彼等は怪しむこともしなかったろう。 実際、氷河の表情は、この村に来たばかりの頃より、はるかに穏やかなものに変わっていた。 それは、村人たちの仏像のような穏やかさとは、完全に趣を異にしたものではあったが。 氷河の変化は、自分の罪の抹消によるものでしなく、愛するものに出会い、求められ、受け入れてもらえる喜びのせいだった。 「もっと飯を食え。おまえがあんまり細すぎると、酷いことをしているような気になって、俺は腰がひけてしまう」 半分冗談で言ったそんな言葉をすら真に受けて、無理に食物を体内に摂り込もうとする瞬が、氷河は可愛くてならなかった。 自分の身体はこれまで食べてきた罪に浸食され汚れていると瞬は言い張るが、その瞬が健気すぎ素直すぎることが、氷河自身にも抑え難いほどの激しさをもって、氷河の心を瞬に向かわせた。 そして、やがて、氷河は、罪喰いの儀式の夜に瞬を抱くだけでは満足できなくなっていったのである。 というより、そんな だから、彼はその通りにした。 鳥居の奥ではなく俗界で──普段自分たちが寝起きしている棟の、庭に面した廊下で、氷河は瞬を抱きしめた。 「駄目です。誰かに見られたら……ああ……」 「さっき昼食の支度を終えた者が帰っていったばかりだ。ここには誰も来ない」 「でも……あぁ……ん……」 「そんな薄い浴衣一枚だけ着て、俺の前に出てくる方が悪い」 滅茶苦茶な理由をつけて、氷河は瞬の膝を割った。 無理矢理氷河の膝の上に座らされたはずの瞬の抵抗は、だが、ほとんどないようなものだった。 瞬は、すぐに抵抗の素振りを消して、身の内に氷河を受け入れた。 甘いばかりの吐息と喘ぎが、すぐに、氷河に突き上げられるたびに発せられる小さな悲鳴に変わる。 もしかしたら、その懸念の言葉とは裏腹に、瞬の心のどこかには、誰かにこの姿を見られたいという気持ちがあったのかもしれない。 罪喰いとしてではなく、一人の人間として求められている自分を誇りたいという気持ちが。 そして。 瞬のその望みは、まずいことに叶えられてしまったのだった。 |