第二章 供犠





沈まぬ太陽と謳われている太陽神の館にも、夜はやってくるものらしい。


沈んでも、必ず翌日にはその姿を現すからこそ、太陽は復活の象徴なのであって、もし本当に太陽が沈まなかったなら、地上はすぐに痛々しく焼けただれた世界に成り果てるに違いない。

今の瞬がそうだった。


視界ははっきりしている。
まもなく迎える新しい朝の光のかけらを、瞬の目は捉えることができていた。

だが、生きているのは、目だけだった。


身体も思考も、瞬の制御下にはない。
誰に何を束縛されているわけでも、制限されているわけでもないというのに、瞬は自身の身体を動かすことができず、順序だった思考を形作ることもできずにいた。




「おい、生きてるか?」

その声が自分に向けられたものだということに、瞬はしばらく気付かずにいた。

誰の声だろう――? 

瞬は、ぼんやりとした記憶の糸を辿ってみた。


その記憶も、今はひどく頼りないものだったが。








【next】