自分の身体がアベルに変えられていることを、瞬は自覚していた。
認めずにいるのは不可能だった。

彼の声や手や欲望そのものに命じられるまま、瞬は熱い息を吐き出し、喘ぐようになっていた。
アベルの為す行為に快さを覚えるようになった。
アベルの手に触れられ、その目で犯されるだけで、身体が疼くようにもなった。

確かに、瞬はその行為に徐々に慣らされていた。

それは、アベルの愛撫が日ごとに優しくなっていくせいでもあった。
そして、残酷な神は、身体の次には、瞬の心を篭絡しようとしているようだった。


彼は、瞬を抱きしめては、その不幸に同情してみせた。

『かわいそうな瞬』『気の毒な瞬』と、彼は毎夜、瞬の耳許で囁いた。

身体だけでなく心も私に委ねてしまえば幸せになれるのに、なぜそうしないのかと、
太陽神に愛されていることに、なぜ誇りを抱かないのかと、
神は、深く優しい──猫撫で声にも似た声で──瞬に問い続けた。

しかし、それも長くは続かない。
瞬が何も答えずにいると、彼はふいに苛立ち、荒々しく瞬の中に押し入ってくる。

瞬に、不必要なほどあさましい態勢をとらせて。

そして、瞬は、好きでもない相手に、身体を開き、貫かれ、喘ぐ。
好きでもない相手の愛撫に悶え、陶酔し、いつの間にか、瞬の身体はそれに応えるようにさえなっていた。

好きではない。
好きではなかったが、瞬は、アベルがそうする訳だけはわかりかけていた。


地球を滅ぼすほどの力を持った神。
一人の子供の心も自由にできない神。
妹に理解されず、父神に力を封じられた神。


『なぜ、私を受け入れないのだ……!』

決して言葉にはしなかったが、彼はいつもそう訴えながら、瞬を貫いていた。








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