瞬は生きていた。 見慣れぬ白いキトンを身に着け、華奢な手足を惜しむ様子もなく陽光にさらしている。 似合ってはいるのだが、それがアベルから与えられた衣装だということ、アベルからあたえられたものを瞬が諾々と身に着けているのだということが、氷河の勘に触った。 が、ともかく、生きて、瞬が、目の前にいるのだ。 「しゅ……」 アベルの警告を無視して、氷河は瞬の名を声にしかけた。 そして、瞬の様子がおかしいことに──というより、瞬の立っている庭の様子がおかしいことに気付く。 声にして名を呼ばれたりなどしなくても、これだけの近距離にいたら、瞬はとっくに仲間たちの小宇宙に気付いていていいはずである。 しかし、瞬はぼんやりと、その庭の一点を眺めているだけなのだ。 その横顔は、理由を知らされずに突然牢獄から解放された囚われ人のように、心許なげだった。 「あの庭全体に強力な結界が張られています。瞬には、私たちの声も小宇宙も届いていないわ」 沙織の言葉に、氷河が歯噛みをする。 「そんなもの、破ってやる……!」 やはり、瞬は、その意思を曲げられて、太陽神の結界の中に閉じ込められているのだと思えることが、氷河に力をもたらした。 氷河は、抑えられない憤りの助力を得て、小宇宙を燃やしかけ、そして、そうすることをやめた。 太陽神の結界で包囲された庭に、庭の看守が現れる。 庭の一角にぼんやりと立っている瞬に歩み寄ると、彼はその腕を伸ばし、背後から瞬を抱きしめた。 (…… !? ) 太陽神の結界は、最初から必要のないものだったかもしれない。 氷河は声を発することもできなかった。 自分の胸にまわされた腕を、瞬は払いのけようともしない。 瞬の身体は太陽神の腕と胸にすっかり収まり、それでなくても小柄な瞬の身体は、アベルの腕の中で実際よりもはるかに小さく頼りなく見えた。 髪に触れていたアベルの唇が、瞬の肩に下りてくる。 それでも、瞬は、アベルに抵抗する気配も見せず、その横顔は無表情──だった。 喜んでいるようにも、安らいでいるようにも見えない。 が、同時に、嫌悪しているようにも、避けようとしているようにも見えなかった。 瞬は、アベルに身体をもたせかけていて、何の先入観も他意もない人間が二人の様子を垣間見たなら、それは親密な恋人同士のとる所作としか思えなかっただろう。 |