「ご覧いただいた通り、瞬は無事だ」

「瞬と呼ぶなっ !! 」

再びアテナの聖闘士たちの前に戻ってきた太陽神を、氷河は怒鳴りつけた。

青が灰色になるほどにぎらついている氷河の瞳を見て、あまりにあからさまなその妬心に、アベルは吹き出してしまっていた。

氷河が、腹立たしいほど余裕に満ちた神の嗤笑を、鋭く遮る。
「貴様、瞬に何をした !? 」
「何を……とは無粋なことを」

含むようなアベルの笑みが、ひどく氷河の勘に障った。

「そ……そんなことを聞いているんじゃない! マインドコントロールとか、記憶を操作してるとか、どうせ、何か卑怯な手を使っているんだろう! 瞬が自分の意思で俺たちから離れることなどありえない! 貴様は神サマだそうじゃないか、瞬の心を操ることくらい、きっと簡単に──」

「“そんなこと”──の方が気になっているようだが、君は」

あくまでにこやかに言い放つ太陽神に、氷河は食ってかかった。
「なんだとっ !? 」

太陽神に対峙している氷河は、肩で息をしている。
その様子を見て、星矢は隣りに立つ紫龍に、思わずぼやいてしまっていた。
「……ダメだ。氷河の奴、完全に頭に血がのぼってる」

「瞬は……瞬が、どうして……!」

氷河には、自分の心臓の音が聞こえていた。
全身の脈動が感じ取れるほどに、氷河の血は怒りでたぎっていた。








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