(あんな男になら、それを許すのか……)

「は……! カミサマだと!」 

相手は、一度は、地上を滅ぼそうとした邪神である。
瞬の価値観とは、到底相容れない相手のはずだった。
あの傲慢な太陽神は、瞬の心の琴線に触れるような存在ではないはずなのだ。

(神なら受け入れるというのか、瞬? 俺をあんなに恐がっていたくせに、力ある者には従うと言うのか……?) 


否。

そんなことがあるはずがなかった。
瞬が──あの瞬が、そんなことを考えるはずがない。

わかっていても、氷河は、そんな理屈で妬心を抑えることができなかった。

瞼を閉じると、瞬が傲慢な神に抱きしめられている様が、考えたくもないのに見えてくるのだ。



瞬に会わなければならない――と、氷河は思った。

瞬に会って、話を聞いて、瞬の心があんな神の側でなく、以前と同じように仲間たちの許にあることを確認しなければならない――と。


それを確かめなければ、氷河は、苦しくて、これ以上息もできそうになかった。








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