「あの3人を相手にしたにしては、あまり痛めつけられていないようだな。本気で闘わなかったのか」

太陽神の玉座の前に引き立てられてきた氷河には、ほとんど負傷の跡がなかった。
氷河の目的は、アベルの神殿に入ることだったから、彼は、太陽神の聖闘士たちに抵抗らしい抵抗を示さなかったのである。
それが、最も神の力を“世界”に向かわせる危険の少ない方法だと、氷河は考えたのだった。


「よかろう。おまえの会いたい相手に会わせてやろう」

先日会った時よりは少しばかり利口になったらしい氷河を、アベルは玉座から立ち上がって見下ろした。
「ここに来たことを後悔させてやる。愛しの瞬の姿を、たっぷり見て帰るがいい」

それでも、怒りのせいでぎらぎらと燃えているような氷河の目を睥睨して、アベルは彼のしもべの一人に命じた。


「瞬を寝所に連れてこい。庭を眺めているだろう」








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