それは、かなり緩慢な反応だった。

アベルの言葉の意味を理解するには、あまりにも遠い場所に、瞬の思考と判断力は追いやられていたのだ。

意思や理性や判断力よりも先に、瞬は、それを肌に感じた。


氷河の視線。


アベルに貫かれたままで、今の自分に使うことのできる全ての力を使って、瞬は、自分の肌に刺すような痛みを加えてくる視線の先を辿った。


寝室の次の間に続く扉が開け放たれており、そこに人影が4つあった。
氷河と、アベルの聖闘士たちと。

始めのうちは、氷河を取り押さえていたのだろうジャオウたちの手は、今は氷河に触れてもいない。
信じ難い光景を見せられたせいで、氷河は半ば自失しているようだった。
まるで、目だけが生きているようにぎらぎらと、瞬と瞬を組み敷いている男を睨んでいる。



「―― !! 」

瞬の悲鳴は、声にならなかった。

瞬の声にならない悲鳴が消える前に、アベルが瞬を深く突き上げてくる。

「ああああ……っっ !! 」

瞬は、既に、自分がどうなっているのかがわからなくなっていた。
痛いのか、苦しいのか、歓喜しているのか、泣いているのか。
身体が強張っているようで、だが、陶酔に溶けているような気もする。

深い沼の底に沈められてしまっているような、宙に投げ捨てられてしまったような、その両方を一度に為されてしまったような、ひどい混乱に、瞬は襲われていた。

「あ……いや…氷河、見な……」

見ないでくれと懇願する以前に、瞬自身が氷河の視線に耐えられなかった。
氷河の目には、憎悪と驚愕と、そして、獣欲に似た光が宿っている。

「いや……こんな……こんなの、いや……いやだ……っ !! 」

泣き叫ぶ瞬の訴えを無視して、アベルが瞬を貫き続ける。
突き上げられるたびに、瞬の身体と心は軋み、限界の時が訪れる前に、それは壊れてしまいそうだった。

6人もの人間がいる部屋に、瞬の悲鳴にも似た声だけが響いている。
アベルの荒い息使いや、交わりによって発する音は、すべて瞬の嘆きの声に打ち消されていた。








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