もはや、自分の企みも、氷河たちの存在も忘れ果てて、瞬を貫くことだけに夢中になっていたアベルが、瞬の様子がおかしいことに気付いたのは、嗜虐を誘う瞬のその泣き声がふいに途切れたからだった。


彼を受けとめている部分は、相変わらず妖しく蠢いて、アベルのそれを蠱惑し続けていたが、瞬の身体は――その外側は――柔軟さを失い、まるで死にかけた人間のような痙攣を起こしている。


アベルは、瞬が、アベルに貫かれたままで、息を止めていることに気付いた。

「馬鹿な! そんなことで死ねると思っているのか !! 」

瞬が生きていようが生きていまいが、そのままそこにとどまっていたいと訴える自身の身体を瞬の中から引き抜いて、硬直しかけている瞬の頬を、強く叩く。

瞬の胸に空気が吸い込まれるのを見て、アベルは安堵した。
怒りと焦りのために肩で大きく息をしながら、それでも彼は怒りよりも安堵の気持ちに、より強く支配されていた。


「それを、どこかに連れていけっ!」

いずれにしても、氷河をこの場にとどめおくのはまずい。
そう考えて、彼は彼の聖闘士たちを怒鳴りつけ、氷河をこの場から連れ去るようにと、彼等に命じた。








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