第七章 還元




――助けて、氷河。

氷河、助けて……!



瞬の声が聞こえた。

氷河は、その声のする方へと手を伸ばしたが、その手は白い闇を掴むばかりで、瞬の姿を確かめることすらできない。

それはどこかで見たことのある光景──白夜の雪原――に似ていた。
朝も昼も夜もない、そして、自分の他には誰もいない白い闇。

それは、氷河にとって、孤独と虚無と茫漠と、そして、緩慢な死の象徴だった。


「瞬……!」

自分の声で、氷河は、目覚めた。
それが、夢だったことに安堵し、現実は夢よりも悪夢のような状況だということを思い出して、額の汗を拭う。


悪夢──あんな場面を見せられたというのに、氷河は以前のような悪夢は──彼自身が瞬を組み敷いて、その情欲を遂げる夢は──見なくなっていた。


白い夢の中では、瞬が泣いていた。
助けてほしいと、仲間たちの許に帰りたいのだと、その声は、悲痛に訴えている。
だが、氷河の手は、決して瞬には届かない。

瞬を救ってやれない自分の惨めさに急きたてられるようにして目覚め、目覚めて現実の悪夢を思い出すと、氷河は、身体が燃えるような痛みに支配された。




「わあ〜〜っっ !! 」

隣室で、星矢の叫び声が聞こえる。
数分の後、星矢は、断りもなく、がなり声をあげながら、氷河の部屋に飛び込んできた。

「氷河っ! おまえなっ、加減しろよ、その小宇宙!」


自身ではコントロールが効かないほど、氷河の小宇宙は高まっていた。








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