「もし、俺が失敗したら、後を頼む」
「失敗したら瞬も死ぬぞ、きっと」
「死なせない」
「──そうか」

氷河の決意に、星矢と紫龍は何も尋ねずに賛同してくれた。
星矢はともかく、その無謀を責めてくるかと思われた紫龍までが、むしろ激励の言葉をかけてよこすのに、氷河は少々意外の感を覚えた。

「変わったからかな、おまえが。やっと、瞬を守ることの難しさを認識したらしい。俺たちは、心置きなくおまえのバックアップに回るさ」


氷河は、再度の太陽神殿突入を試みようと言い出したのだった。
もう一度、時間をあの時に戻そう――と。

瞬を取り戻すために。
すべての人間が、一個の人間として誇りを持って存在し続けるために、人間たちは、どうしても、その手に瞬を取り戻さなければならない──。

気負う景色もなく訥々と語る氷河に、彼の仲間たちは、何の勝算も謀計もないという氷河の計画に、素直に同心できてしまったのだった。


「悪いな、星矢。いつもなら、この役はおまえの役なのに」
「たまには脇役も気楽でいいさ。今のおまえの小宇宙には、俺は敵わない」


星矢も紫龍も、何の根拠があるというわけでもないのに、なぜか氷河の勝利を確信していた。








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