Calling






「駄目だよ、氷河。こんなところで」

「いやじゃないんだろ? もう、こんなになってるし」





瞬を“こんな”にしたのは俺自身だったが、俺は、瞬が勝手にそうなったのだと言わんばかりの口調で、揶揄するように言った。
瞬は、おそらく、自分がミダラだとか、ハシタナイとか、そんなふうに思って恥じ入っているに違いない。

事実、俺のその言葉に、瞬はぱっと頬を赤く染めた。

「ひ……人が来たら……」
「始業までまだ1時間もある」
「でも……」
「誰が来たって構わないじゃないか。見せてやればいい」

「氷河……」

瞬の声は今にも泣き出してしまうのではないかと思えるくらいに細くて、小さかった。

でも、その頬は上気して、瞳も潤んでいる。
全部、俺の手の悪戯のせいだ。
瞬の腰に、俺の腰を押しつける。
俺が切羽詰った状態になってるのがわかったら、ヤサシイ瞬は、もう俺を拒み通せないだろう。

「ああ……ん」
瞬が意識しているのかどうかはわからないが、その白い喉の奥から、甘えるような溜め息が漏れる。

「おまえが悪いんだ。そんな声出すから」
伏せられた瞬のまぶたを舌先でなぞると、瞬は全身を大きく震わせた。

意図した行動をとっているのは俺の方だが、俺にそうさせているのは瞬自身だし――その存在そのものだし――それにいちいち感応するのは瞬の身体だ。
俺が『感じろ』と指図しているわけじゃない。
瞬は、どこに触れられても敏感に反応してみせてくれて――つまり、恐ろしく感度がいい。

本当に誰かが来ることを心配しているのなら、こんなに感じていられるはずがない――と、俺は無理に思い込んだ。





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