「これがいい変化なのか、悪い方への変化なのかはわからんが、おまえ、瞬と知り合ってからおかしくなったぞ」

紫龍の洞察眼は、俺も認めないわけじゃない。
だが、こいつは、へたに俺の家庭の事情を知ってるから、言うことがいちいち鬱陶しい。
こいつの説教口調に丸め込まれる馬鹿共を、俺は腐るほど見てきた。
こいつの第三の目は、口だからな、なにしろ。

「まあ、人間てのは、いつも何かを欲してるものだ。俺たちの年頃というのは、その何かが見つからなくて、やたらめったに変な方向に迷走することを特権として認められてもいる。が、おまえはその迷走をせずに、いつも冷めているタイプだったろう。今まで色々諦めてきたものが多すぎたせいだとも思うが、それが、今、瞬に集中している。おまえはいいぞ。おまえはそれでいいだろうが、おまえの暴走に瞬を巻き込むのは、あまり感心しないな」

はいはい。
俺は親の愛情を知らない哀れな子供で、その欠如感を瞬で埋めようとしているわけだ。
だから、どうだって?

「あのさー、確かに瞬はいい奴だし、可愛いけどさ。おまえがそこまでのめりこむようなタイプか? 違うだろ? みんなに可愛がられて、いい子いい子されてるタイプだろ? 誰かを泥沼に引きずり込むような――変な言い方だけど、悪女タイプじゃないよな? 俺、どーにもそこんとこがわかんなくてさー」

紫龍の分析が終わると、今度は星矢の素朴な疑問ときた。
瞬が男で俺も男だってことに頓着しない星矢が気になるのは、そーゆーことなわけだ。

大変結構なオトモダチ共だよ、貴様等は。





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